Basic Policy
一般社団法人新潟青年会議所 2022年度 基本方針
理事⾧ 冨山 浩明
はじめに
青年会議所が全てではない
当たり前のことです。しかし、一生懸命になればなるほど、そんな当たり前なことが分からなくなる瞬間があります。私は入会以来3 度のちんけな挫折を味わいました。今でこそその挫折がなんともちんけでしょうもない悩みだったかと思えるのですが、当時は絶望の中で必死に青年会議所に食らい付いている状態でいました。そんな中で3 度目の挫折を味わった時に、ふと、明日青年会議所と会社を飛ぼうと思いました。それによって多くの方に迷惑をかける。送り出してくれている会社にも迷惑をかける。だけど当時はそんなことより自分の人生なので明日飛ぼうと思えた瞬間がありました。そう思えた瞬間、前しか見えてなかった自分自身の視点から、無責任に逃げようとしている自分を俯瞰的に見ている視点に変わり、それまで無意識に抱えていたものや、こうあるべきという概念から解き放たれ、一気にちんけな悩みだったのだなと思えるようになりました。ですので、誤解を恐れずにお伝えすると、青年会議所が全てではないのです。自主的に入会し、時間もお金も費やしているのは自らの選択であって、辞めるのもまた自らの選択に委ねられているのだと。しかし、一方で、青年会議所でないとできないことがあります。青年会議所でないと出会えない人がいることも事実であります。その学び舎である青年会議所でロールプレイングゲームの如く様々な困難に立ち向かい、そこで得た経験値を元に自らをレベルアップさせ、その後の人生の武器や防具を得ていくことが、どれだけ代え難いことなのかを理解した時、私の選択肢はこの先どんなことがあっても辞めてたまるかという結論に達しました。この青年会議所に所属する誰もが、仕事をもち、家族や仲間をもち、決して余裕があるわけではないのに、限りある時間とお金を費やして活動しています。その私たち自身が、展開する運動や、日々取り組んでいる活動に誇りをもち、まずは自分の周りに共感の渦を巻き起こそう。そして、人々の暮らしや周りの環境が激変しているこんな時だからこそ、愛をもって互いの個性を尊重し、勇気をもって一歩踏み出せる、そんな組織でいよう。
地域や企業の人財が自然に集まる組織
青年会議所は、世界をより良くするために行動を起こそうという団体です。社会実験を繰り返し、人財を育成し、より良い社会にしていく、いわば「地域の幸せ研究所」であるといえるのではないでしょうか。近年、世界の青年会議所にとって会員減少が喫緊の課題であるにもかかわらず、新潟青年会議所は毎年多くの仲間を迎え入れることに成功しています。絶えず変わりゆく時代の流れや環境に適応し、地域の幸せを研究し続ける仲間を探し求めることは、今日までこの組織が存在するという事実に報いる唯一の使命であり、これから先も次世代につなげていかなくてはなりません。こんな時だからこそ、地域に住まう人々や企業が青年会議所に貴重な人財を投入できる愛と勇気溢れる魅力的な組織でいよう。
未来を見据えた地域活性化
新潟県はこれまで3度人口日本一になったことがある県です。稲作に適した土地であったことに加え、運送の主役であった海運「北前船」の寄港地であったことで、累計で12年もの間、日本で一番人口が多く活気に溢れていたのです。しかし近年では、少子高齢化・人口減少・都市部への生産年齢人口の流出等によって、地域経済に大きな打撃を与えています。オンラインが急激に普及した今、地方都市の在り方が見直されているのが現状です。改めて新潟に住むこと、新潟に訪れることの意義をアップデートする必要があります。新潟の10年先の未来を見据え、次世代を担う誰もが夢を描け、愛と勇気溢れる地域を我々が創っていこう。新潟には様々な魅力があり多くの人が多種多様な場面でその魅力を思い浮かべることができるでしょう。しかし、それらの魅力が深く人々に浸透していなければ、それは千差万別の意見となりいつしか埋もれていってしまいます。地域社会の中で共有され得る考え方や価値基準を体系化し、地域に住まう人々の精神的な根底として根付かせる必要があります。そうすることで地域の魅力を文化に昇華し、大きなムーブメントとして世界へ発信することにつなげ、人と活気が溢れる地域にしよう。新潟市は、国際線を有する空港や国際港湾、そして高速道路、新幹線と陸海空全てのインフラが整っている全国的に見ても稀有な都市です。新潟がこれまで以上に国際的にも国内的にも重要な拠点都市として役割を最大限に発揮するためには、行政や関係諸団体との連携関係をより深く築くだけでなく、社会実験を通じて実践していくことが必要です。新潟が物流面でも人的交流の面でも真の意味で拠点となり、持続可能なまちづくりにつなげていこう。我々が普段見ている風景には故郷に対する愛を育むエッセンスがたくさん詰まっています。人と地域のつながりが多様化する現代において、私たちが住み暮らす地域への郷土愛を再定義すると共に、新潟の地域課題解決のために、環境、経済、科学技術、文化・芸術、スポーツ等のあらゆる分野において、社会に持続的なインパクトを与えることのできる可能性を秘めた若者を発掘する必要があります。人と人のつながりだけでなく、人と地域環境におけるつながりを具体化させ、次世代に継承できる「つながりのカタチ」にアップデートすることで、地域に好循環を起こす起爆剤として共に歩もう。
戦略的にムーブメントを創る
私たちが行っている運動や活動は全て人々に共感を生むことが前提となっています。あらゆる情報が玉石混淆するこの時代に、いくら断続的に情報発信をしたとしても、読んでいる人や聞いている人に届かない文章や言葉は、ただの文字列でしかなく、全く無意味な情報です。我々が激動の時代に先頭に立って変革を起こし、誰一人取り残さない社会を実現するためには、相手に効果的に伝わるメッセージを発信しなくてはなりません。受け手の立場に立って、人々の心に刺さる戦略的かつ愛と勇気溢れる発信をしていこう。メンバー数の増加に伴い我々が取り組む事業は多岐に亘り、一人ひとりが日々どんな活動をしているのかが見えづらくなっています。内部への情報発信をこれまで以上に充実させ、事業一つ一つにスポットライトを当てることで、組織全体のモチベーションと事業の価値を向上させよう。そして、これまで新潟青年会議所は67年間という⾧きに亘り、非常に多くのすばらしい事業を世に生み出し、今では地域の風景になっているような運動を展開してきました。そして、2020年にはこれまでの事業構築の歴史をデータ化し検索できるようにしました。しかし、近年の在籍年数の短期化や膨大になるデータ蓄積によってそれらの宝の山が見えづらくなっているのも事実です。先達たちが辿ってきた事業構築プロセスやそこから見出した教訓を、これから事業を展開していく我々の糧とし、事業自体の価値を向上させるだけでなく、運動の質を高め、成果を最大限に発揮させよう。インターネットの普及拡大に伴い、圧倒的なスピードと情報量で瞬時に世界中とつながるようになりました。新潟青年会議所でもこれまで多くのメディアやSNSを使い情報発信しています。チャネルが細分化され発信先が増えた分、従来通りの手法にとらわれることのないそれぞれの特色を活かした、より戦略的かつ連続的に広報活動を展開していく必要があります。これまでの広報活動で積み上げてきた経験や実績を活用し、さらなるフォロワーを獲得することができれば、ただの情報発信ツールからコミュニケーションツールとなり、市民の皆さんから共感と信頼を獲得し、事業をムーブメントに変えることができるのです。公立中学校教育や地域の企業にSDGsの考え方が組み入れられる等、SDGsは広く一般的となり認知度も向上してきました。それに伴い関連する団体が発足したり、ワークショップが開催されたりと、学生や若者たちを中心に様々な活動が行われています。地域を牽引し続ける我々は誰一人取り残さない社会を実現するために、これらの組織や団体と連携しSDGsを認知から実行へ移すタイミングにきています。地域社会においてパートナーシップを通じて、SDGsの観点で新しい価値を見出し、まちづくり、人づくり、組織づくりに活用して運動を展開していこう。
こんな時だからこそ民間外交のアップデート
近年の世界情勢はより複雑化し、近隣諸国間における政治同士の外交だけでは解決することが難しい様々な国際問題を内包しています。世界とのつながりのカタチが変化し、多様な交流の手法が見出された今、人と人、地域と地域が世界との関わり方をアップデートする必要があります。こんな時だからこそ、恒久的な世界平和を掲げるJCIで日々活動する私たち一人ひとりが国際問題を自分ごととして捉え、民間レベルでのアップデートされた交流を通して社会の流れを変えてゆき、愛と勇気溢れる新潟の国際都市化を推し進めていこう。簡単に海外を訪れることや、気軽に海外の人を呼び込みインバウンド需要を創出することができなくなった昨今、なぜ新潟の国際都市化が必要なのかをもう一度改めて考える時がきています。人口減少や少子高齢化がもたらす新潟の社会課題と、世界の人口爆発やそれらに起因する食料危機問題等、喫緊に解決しなければいけない海外とのつながりは、これまでより複雑に絡み合う一方で、我々の住む地域に恩恵をもたらすチャンスは増えているはずです。新しい生活様式に見合う課題解決方法を導き出すことで、国際感覚豊かな人財で満ち溢れるまちづくりをしていこう。青年会議所には国際的な諸会議があり、そこでは多くの海外の文化やメンバーと触れ合い、交流を通じた相互理解を促進する機会で溢れています。2022年には、JCIアジア太平洋地域会議(ASPAC)が日本の堺高石で開催されます。そして、新潟青年会議所は⾧きに亘り、姉妹JCである大韓民国汝矣島青年会議所と中華民國板橋國際青年商會と交流を図ってきています。今まで通りに現地での交流が困難になっている今、オンラインを用いる等新たな交流のカタチを模索し、渡航せずともより多くの青年会議所メンバーと触れ合うチャンスを最大限に活用する必要があります。青年会議所における姉妹関係や国際諸会議が地域にどのようなメリットをもたらすのか、私たち一人ひとりが当事者意識をもって原体験すると共に、これまでの友情関係を活かした上でさらに一歩進んだ関係性を構築し、新しい交流のカタチを実践していこう。
変革を起こせる人財づくり
日本は2010年より人口減少のフェーズに入り、令和2年度の統計でも年平均0.14%減と本格的な人口減少が顕著になっています。新潟市における人口も21ある政令市の中で17番目と順位を下げています。そんな中でも、地域の未来を担うのは間違いなく若者であり、そこに住まう子どもたちです。人生の学び舎たる青年会議所には、メンバー自らを成⾧させる機会に満ち溢れている上、地域に住まう若者や子どもたちを育てる仕組みがたくさんあり、これらを活用しない手はありません。メンバー一人ひとりが感性と個のもつ力を増強させ、組織力をさらに強化し、愛と勇気溢れる人財づくりをしよう。現代の子どもたちはインターネットやSN S ツールの普及により、常に誰かとつながり実際に会わなくても会話やコンタクトが取れる時代になっています。手軽にいつでも他者と表面的なコミュニケーションを取れる機会が増えている一方で、相手のことを深く理解できるような場面は少なく、それによって仲間はずれやいじめに発展する危険性もある等、時代に即した良好な人間関係構築の術を確立する必要があります。学校や家庭では教わることができない青年会議所ならではの強烈な原体験を通じ経験することで、人を思いやる心やモラルや礼儀、健全な心を養い、未来の地域を担う青少年を健全に育成していこう。組織づくりにおいて最も重要なことは志の共有であると考えます。これは青年会議所に限らず会社や家庭においても同じです。まずは我々自身が、これからの時代に必要とされる知見を習得し、地域における課題解決を実践できる強い実行力と行動力を兼ね備え、周りにいる人たちを巻き込んでいける魅力ある人財に成⾧しなければいけません。青年会議所での学びの機会を積極的に活用し、単なる個人の成⾧だけでなく、所属する組織の成⾧につなげ、我々の運動にさらなる共感を生んでいこう。
強いパートナーシップが効果を最大化させる
青年会議所は、青年経済人の集う組織であり、そこに所属する我々は誰もが皆何かしらのビジネスを通して地域経済に貢献しています。地域においてその効果を最大限に発揮させ、自らの成⾧だけでなく、企業や地域の発展に寄与するには、行政・企業・団体と積極的にパートナーシップを構築することが必要です。より多くの地域市民を巻き込み、我々の運動に共感を促すことで、組織内外にパートナーシップを築き上げ、愛と勇気溢れる活発な交流に発展させていこう。新潟青年会議所では、ビジネスの機会が公益社団法人日本青年会議所の定款に明記されて以来、これまでより多くの場面で関連する事業や成果を生み出してきました。これまで以上にビジネスの視点での連携をアップデートし、組織や地域の関係性を次のステップに進めるためには、これまでより一歩踏み込んだ関係を構築すると共に、より実践的な取り組みに昇華する必要があります。団体や組織の枠を超えて持続可能なビジネスの連携関係を創り、地域や市民に愛される好例を生み出していこう。新潟青年会議所は、これまでも毎年多くの出向者を輩出し、メンバー一人ひとりが数々の学びの機会を活かして自らの成⾧へとつなげてきました。2022年度の新潟青年会議所は、北陸信越地区協議会に会⾧を輩出する等、近年でも特に他のLOMや出向先のメンバーと接する機会が増えることとなります。これは入会年度の浅いメンバーが半数を超えてきている新潟青年会議所メンバーにとっても、積極的に交流を図ることでLOMでは経験できない原体験や人脈を得る絶好の機会になります。外との交流を通してLOM内の団結力を深め、より強固な組織づくりにつなげていこう。これまで67年もの間脈々と受け継がれてきたこの組織は、厳格かつ適正な審査の上で成り立っており、健全な財務基盤と法令遵守の精神に基づく管理体制を一層強化していくことが重要です。そして、パートナーシップを土台にした共感の証としての外部資金の導入は、事業を持続可能なものにし、成果の高いものへと昇華してくれます。磐石な組織づくりと挑戦できる環境づくりの両輪をもって、新潟青年会議所の存在価値をさらに高めていこう。組織の根幹は厳格な運営であり、総会や理事会は青年会議所の重要な場となります。そこには守り抜かれてきたルールと受け継がれてきたプロトコルがあり、先輩諸兄姉から脈々と紡がれてきた厳格な運営は新潟青年会議所の基盤となるものです。しかし、社会情勢は加速度的に目まぐるしく変化する現代においてこの運営に変化が求められているのも事実です。今までの常識を疑い固定概念を捨て発想の転換をしながらも、古きを重んじ発展していく新しい組織の基盤を創ろう。
結びに
ここにいる全ての人が様々な選択肢がある中から、自らが青年会議所で活動することを選び、限りある時間とお金を使っています。自分自身のため、会社のため、はたまた地域や社会のため、人それぞれで理由は違うかもしれませんが、そこには必ず愛があるはずです。そして、ここに時間とお金を費やすと選択をした時には勇気が必要だったはずです。⾧い人生の中でこの時間は一瞬の煌めきかもしれないけれど、この一瞬を輝かせることが、あなた自身を成⾧させ、会社や社会をより良くしていけるのだと信じています。愛と勇気溢れる時間を共に過ごそう。