一般社団法人新潟青年会議所 2021年度 基本方針
渡部 雄一郎
「思考は現実化する」
1937年。哲学者のナポレオン・ヒルが生み出したこの言葉は世界中に様々な可能性を生み出しました。歴史に名を刻む多くの著名人や事業家は、この言葉を武器に世の中に必要とされている課題を見出し、それを解決するために思考と行動と多くの失敗を繰り返しながらも、少しの可能性を現実に変えてきたことで、より良い世界を創り上げてきました。
我々が想い描く「NIIGATA」を実現するために、家族の豊かさと笑顔を実現するために、自らの人生の成功を実現するために、そしてより豊かな明るい社会を実現するために、「強く想い行動すること」は我々青年経済人の使命なのです。
はじめに
2020年、世界70億人の誰もが経験したことのないコロナショックが世界を襲い、日本においても692ある青年会議所の多くが様々な活動を自粛せざるを得ない状況が続きました。しかしながら、早いタイミングで組織と手法の改善を迅速に行うことで、様々な事業展開を行っていた青年会議所も多数あります。新潟青年会議所もその一つです。
時代は変わり続け、地域の課題、社会の課題も常に変わり続けます。これまで新潟青年会議所は、時代のニーズに合わせて66年間に亘って様々な挑戦と変化を遂げてきました。これまでもこれからもその方針を変える必要は決してありません。世界がどのような変化を起こしても、良き伝統を継承しながらもあくなき挑戦を続け、変化を恐れず、最速のスピードと最高のチームワークで地域の課題を解決していくのです。
なぜ、我々は日々の中で「JC」という選択肢を入れているのでしょうか。誰かの笑顔のために何かをするのが「JC」ならば、その「誰か」とはいったい誰なのでしょうか。私は思います。その「誰か」とは、家族をはじめ、自分を心身ともに支えてくれている身の回りの方です。地域をより良くする、その先にあるのはその「誰か」の笑顔であり、青年会議所で学んだことを自らの仕事に活かす、その先にあるのも「誰か」の笑顔ではないでしょうか。そうであるならば、そのための「JC」であり、そのための仕事であり、そのための自分自身でなければなりません。
全ては「誰か」のため。そしてそれを実現していく過程に、社会への貢献と明るい豊かな社会の実現があるはずです。だからこそ、私自身の人生の使命とは「家族と身の回りの方に笑顔あふれる豊かな人生を提供するとともに、社会へ貢献し続けること」なのです。
全ての思考は現実化します。人にはそれぞれの思考があり、自らが強く想い描くことは現実となり得るのです。そして組織としての思考も同じく、組織が想い描くことを明確にし、組織に所属するメンバー一人ひとりがそれを強く信じ行動すればそれは現実となり得るのです。
地域の課題解決に取り組むメンバーの増強が、未来を支える
1954年に新潟青年会議所が生まれて以来、時代の変化に応じて柔軟に組織を変えながら、様々な社会変革運動が行われてきました。新潟青年会議所の設立趣意書には「今後の経済社会の健全な進歩発達を図るためには、青年のもつ熱情とたゆまざる努力に期待するところが甚だ大きいものがある。」と記載されています。いつの時代でも、JC三信条である「奉仕・修練・友情」のもと、我々青年会議所メンバーは、個々の成長を促し、想いを一つにすることで、地域の課題に立ち向かう存在であり続けなければなりません。
近年、全国的にメンバー数の減少が進んでいる中、新潟青年会議所のメンバー数は安定して伸び続け、全国でも有数のメンバー数となりました。しかしながら、平均在籍年数は減少傾向にあり、平均年齢は上昇傾向となっている現状の中で、2021年度には近年に無い多数のメンバーが卒業を控えています。単年度制という連続の中で変化と成長を繰り返し、英知と勇気と情熱をもった多くのメンバーの力は新潟青年会議所の原動力そのものであり、地域の課題を永続的に解決し続けるためには絶対に無くてはならないものです。
そして、新たに同志として加わったメンバーと共に、新潟青年会議所メンバー一人ひとりの力を成長させる必要があります。個の力が成長することでより強い組織となり、組織がさらに個の力を成長させ、それがより良い運動を展開する力となり、ひいてはメンバー自らの社業の成果にも繋がっていくのです。個の力と組織力の好循環こそ、青年会議所の最も大きな強みとなるのです。
組織の広報戦略は地域の課題解決に直結する
全ての組織には目的があり、その目的を達成するために行動指針や事業計画が存在します。そして、目的という最終ゴールへの手法の一つとして欠かせないのが、広報戦略です。我々青年会議所がどれだけ素晴らしい事業を実施しても、それそのものを広く発信することができていないのであれば、地域のごく一部にしか笑顔を生むことはできず、それ以上の運動に発展することは無いのです。組織の事業と存在意義を対内外ともに広く発信することで、一つひとつの行動の成果が増大し、事業計画の達成度も高まり、より高い目標設定も掲げることが可能となります。つまり、最適な広報発信とは、組織の目的という成果を無限大に高めていくために欠かせない重要な戦略となるのです。
2019年には、日本の総広告費に占めるインターネット広告費がテレビメディア広告費を超えました。世界中にインターネットが張り巡らされ、今や世界中の人が世界中から情報を容易に集めることができ、同時に世界のどこにいても自らの需要を満たすことができる時代となりました。青年会議所においても、県境や国境を越えてSNSをはじめとする新たなツールを最大限に活用することで、低コストで組織の紹介や事業内容をこれまで以上に発信することが可能になりました。最も低い費用で最も高い効果を出すことが広報戦略の重要な指標であり、そのための戦術を考案し実行することができれば組織力向上の可能性は無限大です。
ニイガタ超会議が2016年に生まれてから3年間に亘って展開され、そして2019年には65周年記念事業である「Peace Bank」が開催され、この数年間で「新潟JC」の名称と事業は広く発信され、地域にとっての必要性も向上してきているはずです。その発信力をより強固で高尚なものにすることで、メンバー一人ひとりの意識の向上と、全ての事業成果の向上に直結するはずです。青年会議所がどのような組織なのか、それを広範囲かつ多くの市民の記憶に強烈に残ることを発信することは今後の事業の成果に直結します。また、対外だけではなく対内への広報を強化することで、メンバーの意識向上と事業レベルの向上へと繋がっていくのです。
個々の成長が組織を強くし、地域に笑顔を増やす
メンバーの増員とともに常に課題として挙げられることは、我々青年会議所という組織の在り方と組織力そのものです。2020年、コロナ禍により社会全体が大きなダメージを受けましたが、そのような状況の中だからこそ、我々青年経済人が率先して行動し地域に笑顔を増やす努力をし続けなければなりません。そのためには、メンバー一人ひとりの意識の向上と成長が必要不可欠です。新潟青年会議所にいることで、自らが成長し、自分自身と周りの方々を豊かにし、新潟に多くの笑顔を創ることができる。誰もがそう感じることができる組織となれば、自ずとより良い組織へと変化し続けるはずです。また、メンバー同士、LOM間同士のコミュニケーションを活性化することからも個々の成長を促すことができ、それが組織力強化に直結していくのです。
青年会議所の使命とは「JCI Mission」に書かれている「より良い変化をもたらす力を青年に与えるために発展・成長の機会を提供すること」です。青年会議所では様々な人財育成プログラムが準備され、メンバーの誰もが平等に受ける機会を得ることができます。それらを活用することで、メンバーのスキルとマインドを向上させることができれば、地域をより豊かにするための直接的な手法になるはずです。また、メンバー同士の交流からも学びを得られることは多くあり、様々なメンバーとコミュニケーションを図ることでJC三信条の「修練」に直結していくのです。
新潟青年会議所は日本有数のメンバー数を誇り、多種多様な職種と人財を豊富に抱えています。組織は同じ目的や目標に向かう個の集合体であり、強い組織では、自立した個の力が常に切磋琢磨しているものです。メンバー同士の交流は、事業の成果にも個々の成長にも直結するため組織にとって必要不可欠な手法であると考えます。また、大韓民国ソウル汝矣島青年会議所、中華民國板橋國際青年商會との長きに亘る3LOM交流は私たち新潟青年会議所の財産であり、国際交流から多くの学びを得て、さらなる信頼構築をすることでそれぞれの地域の発展に寄与する必要があります。
課題解決のプロフェッショナルとして未来への仕組みを創る
ウィズコロナと呼ばれる新しい時代になった今、その中だからこそこれまで以上に活用されるようになった革新的なサービスや技術があり、それらを最大限に活用することは、日々変わりゆく社会課題を解決するために必須なツールであることを確認させられました。一方で、SDGsという国連が定めた2030年までのゴール達成への活動はなおも継続しており、我々青年経済人にとって取り組まなければならない課題であることには変わりません。また、さらなる情報通信技術の進化に伴い、地域の課題解決へ向けてこれまで以上に多くの選択肢が増え、それらを活用することで新しい地域の姿を創造できる時代となりました。
SDGsは2015年9月に国連総会で採択された後、全国の青年会議所でも推進され、2019年1月の京都会議ではSDGs推進宣言が全国の理事長によって採択されました。しかしながら、日本の97%を占める中小企業への浸透はまだ浅く、SDGsという言葉やその必要性の理解はしていても一企業でSDGsと経営を結び付けることができていないケースがほとんどではないでしょうか。SDGsの推進と企業の成長が直結するということを明確にし、SDGsの推進を新潟の中小企業にとっても必要不可欠な課題にするために、青年会議所のもつ豊富な知識とネットワークを活用することで、新潟の中小企業がSDGs推進へ向けて動き出すきっかけを創る必要があります。
1995年にインターネットが商業化されたことでIT革命が起き、そしてスマートフォンの普及がはじまった2008年以降、新しい技術は世界を変え、私たちの生活も急激に変化させてきました。そして、次に見えているのはSociety5.0による新しい地域の姿の創造です。Society5.0で国際都市「NIIGATA」はどう変わることができるのか。それを見据えて未来の新潟を創造するための一助となる行動が必要です。また、国際都市「NIIGATA」の実現へ向けて2017年にJCIASPAC誘致活動の決議が総会でなされましたが、そこから3年、周囲の環境は著しく変化を遂げてきた中で、今一度、国際都市「NIIGATA」へ向けて我々に何ができるのかを議論する必要があります。
地域の魅力発信と新たな人財の創出が創る未来
少子高齢化と人口流出の進行とともに、新潟市においても人口減少問題は中長期的に大きな課題であり、地域における定住人口と交流人口そのものを増やし続ける必要があります。そのためには、「NIIGATA」という私たちが愛してやまないブランドをより広い世界へ発信するとともに、新潟における地域課題を見極めて解決に向かい行動する必要があります。「新潟に住み続けたい」「新潟に住んでいる自分が好き」「もっと多くの人に新潟に来てほしい」そのような気持ちが最も大切な郷土愛であり、その想いの数そのものを増やすことができれば自ずとより良い「NIIGATA」になり、最も住民幸福度の高いまちとなれるはずです。
本州日本海側唯一の政令指定都市である新潟市には、世界にも自信をもって発信できる魅力があります。新潟のまちには、地域の特性を活かし、文化と歴史が入り混じった様々な「NIIGATA」ブランドがあるのは確かな事実であり、出身地問わず新潟のまちを愛している人は多く存在しています。我々青年会議所がもつ知識とネットワークと最も効果的な手法を用いて、新潟の魅力をこれまで以上に県内外に発信していくことができれば、新潟における郷土愛そのものが増えていくはずです。
一方で、地域には様々な課題が発生し続け、その解決へ向けて行動する人財はいつの時代においても必要であり、新たな人財を創出することは私たち青年会議所の重要な役割の一つです。2040年には新潟市の人口が70万人を下回ることが予測されている中で、人口の減少は確実に地域経済を疲弊させてしまいます。それを打開するには新たな切り口によって交流人口と定住人口を増やす必要があり、新潟が抱える地域課題への知識を深め、その解決への強い意志をもった若き人財を創出することで、未来の持続可能な新潟の実現へと近づけることが必要です。
ビジネスで経済を伸ばし、地域を活性化させる
2018年度、公益社団法人日本青年会議所の定款にビジネスの機会が明記されてから、全国の青年会議所間でビジネスに関する事業や実際にビジネス連携を生み出す等、多くの成果が生まれてきました。青年会議所は青年経済人の集まりであり、地域の経済を充実させる任務を負っているのは明確な事実です。ビジネスを糧に日々の生活と自己成長を果たしているメンバーが多数の組織の中で、やはりビジネス抜きにしては地域の未来も私たち自身の未来も語ることはできず、対内外ともに学びを得ることでメンバー自らの企業と地域企業の成長に繋げていく必要があります。
私たち青年会議所メンバーは、それぞれが日々自身の仕事と向き合いながらも地域の未来のために活動をしている多様なプロフェッショナルであり、その集まりが青年会議所という組織です。そのプロフェッショナルの集団の中で、一人ひとりのビジネスマインドを成長させ、スキルを高めることで、それぞれの社業の成長があるはずです。青年会議所で得られるビジネスの機会とは、新情報、人脈、マネジメントといったようなものであり、それらをメンバー自身が深く学び活用することで、青年会議所メンバー同士のビジネス連携が生まれ、新潟という地域が必要としている課題を見出し、その解決へ向けてさらなる行動ができるはずです。
「地域を活性化させるのは、経済である」これは私が心から尊敬する偉大な経営者の言葉ですが、この短い文章の中にとても強烈な説得力を感じました。新潟には「商人のまち、新潟」と呼ばれた時代がありました。新潟に多くの商人魂を再び植え付けることができるならば、これからの新潟の未来はとても明るくなるはずです。経済を活性化させるためには、新規企業の創業と既存企業の魅力向上の両輪が必要であり、ビジネスの創造と発展なくして経済発展は成し得ません。青年経済人の集合体である我々青年会議所がその必要性を発信し、成果へと繋げていく必要があります。
青年会議所の全ての活動を支える根幹
財務コンプライアンスと組織運営は、我々青年会議所が社会のために存続していくための必須条件であり、組織の根幹ともなる重要な戦略です。組織としてより高い成果を出すためには、限られた予算の中で最も成果の高い事業を展開する必要があり、一方で、堅実的な計画の立案と厳格かつ効率的な組織運営があるからこそ、様々な事業を構築することができるのです。それらのいずれかを失ってしまえば組織はたちまち瀕死の状態となり、明るい豊かな社会を目指すための活動はできずに組織の存続すら危ぶまれてしまいます。
全ての青年会議所活動において、健全な財務基盤とコンプライアンス審査があるからこそ、成果の高い事業を生み続けることができるのです。また、全国的にメンバー減少が続いている中、会費収入に頼っているだけでは効果の高い事業を継続していくことは難しい状況です。パートナーシップの向上による協賛金等の外部資金のさらなる導入はこれからの事業継続に不可欠な要素であり、その仕組みを構築することで新潟青年会議所にとって長期的視点での事業展開が可能となります。
青年会議所とは、会議を行うことで社会の課題を見出し、解決策を生み出すことで運動を展開している組織ですが、その土台となるものは、これまで66年間に亘って継承されてきた伝統と、今の時代に即した効率的な会議手法です。2020年、日本各地そして世界中の青年会議所が取り入れたWEBを活用した会議システムは、メンバー一人ひとりの限られた時間を最大限活用する有用的なシステムであることは明確で、現代の中で活用しない手はありません。一方で、厳格な会議運営と効率的な議事進行はオフライン・オンラインともに最低限必要なことであり、それを支えるチームがあるからこそ、青年会議所の運動が継続できます。歴史と効率の追求から生まれる強く柔軟な組織運営をすることで、より強く効果的な事業運動を構築していくことができるはずです。
結びに
日本はこれまでに多くの危機を乗り越えて奇跡を作り上げてきました。鎖国から開国に舵を切り明治維新を成功させ、昭和に入ってからは戦後から奇跡的な経済成長を遂げて世界第2位の経済大国となり、東日本大震災という国難の中でも日本人の精神性は世界から注目をされました。新潟市においても、江戸時代には明和義人による自主自立の精神とエネルギーにあふれる住民自治の幕開けをし、明治時代には日本を代表するみなとまちとして発展しました。現在では日本海側唯一の政令指定都市として国際空港をもつアジアの玄関口の一つとなり、首都圏や他県とのインフラも整っている利便性の高いまちとなっています。
しかしながら、人々が創り上げてきた全ての歴史の中には確固たる事実があります。人は、一人では生きていくことはできないということです。何か物事を成し得るには一人でできることはありません。歴史上のどのような出来事を見ても、一人で偉業を成し得たこと等一つもあり得ないのです。これまでも、今も、これからも、世界がどれだけ変わろうとも一つだけ変わらないことがあります。
「誰かのために、誰かと共に。」
ベンチャースピリットで、素敵な仲間と共に、新潟にたくさんの笑顔を創ろう。
共に成長し、共により良い新潟を創り、共により良い人生を歩もう。
あなたの向こう側にいる、誰かのために。
Work Together!!
事業計画
- (1)戦略的かつ効果的な広報発信で内外ともに組織ブランドを高める運動
- (2)メンバーの成長と交流の機会を通じ組織力を強化する運動
- (3)持続可能で革新的な未来都市「NIIGATA」を創造する運動
- (4)郷土への愛と誇りを育み、地域に活力を生み出す運動
- (5)ビジネスのマインドとスキルの強化を促す運動
- (6)時代に即した組織運営方法を見出し、新たに資金調達できる仕組みを構築する運動